「好き」が判断基準にならないとき、人は何を見て相手を選ぶのか。
恋愛結婚なら、ドキドキする気持ちが背中を押してくれます。友情結婚にはその感情が最初からないぶん、「一緒に暮らしていける人かどうか」を、もう少し落ち着いた目で見ることになります。頼りになるのは、お互いの価値観がどれだけ重なっているか、という一点です。
価値観なんて言葉にすると大きく聞こえますが、要は「お金の使い方」「休日の過ごし方」「家族との距離の取り方」といった、日々の暮らしの土台になる感覚のこと。友情結婚の基本そのものについては「友情結婚とは?メリット・デメリット・始め方」で整理しているので、まだの方はそちらも目を通しておくと話が入ってきやすいと思います。
友情結婚で価値観の一致が決め手になる理由
恋愛結婚の相手選びでは、好きという感情が多少の違いを覆い隠してくれます。金銭感覚が合わなくても、休みの過ごし方がバラバラでも、「でも好きだから」で乗り越えてしまう場面があるわけです。
友情結婚には、そのクッションがありません。感情の勢いで押し切る代わりに、生活の設計図がどれだけ噛み合っているかが、そのまま暮らしの心地よさになります。国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査でも、結婚相手に求める条件として、男性が相手の経済力を考慮する割合は48.2%、女性が相手の家事・育児への姿勢を重視する割合は70.2%まで上がっています。「暮らしを一緒に回せるか」を見る人が、恋愛結婚でも増えているわけです。恋愛感情をあてにしない友情結婚なら、なおさらここが土台になります。
確認しておきたい価値観を、暮らしに影響が大きい順に6つ取り上げます。
子ども・住居・お金に関わる価値観
最初の3つは、すれ違うと生活そのものが立ち行かなくなりやすい、いわば優先度の高い項目です。
1. 子どもについての希望
友情結婚を選ぶ方の中には、「恋愛は求めないけれど、子どもは持ちたい」という方が少なくありません。ここが食い違うと後から埋めるのが難しいので、早めに確かめておきたいところです。
持ちたいのか持ちたくないのか、持つなら何人くらいを思い描いているのか、性的な関係を前提としない授かり方(シリンジ法や養子縁組など)をどう考えるか、子育ての分担はどうするか。性的な関係を望まないアセクシャルの方やLGBTの方にとっては特に、子どもをどう迎えるかは丁寧にすり合わせておきたいテーマです。
子どもを希望するなら、年齢が現実的な制約になるのは事実です。特に妊娠出産には体の事情がついて回りますし、友情結婚はアプリ登録から対面、交際、入籍、そして妊活開始まで、最短でも一年前後はかかります。受け身でいる時間のコストは、年齢が上がるほど大きくなります。ほしいと感じているなら、早めに動いておくに越したことはありません。子どもを持たない選択ももちろん尊重されるべきですが、希望があるなら時間軸を逆算しておくと安心です。
2. 住居形態の希望
友情結婚は、住み方にいくつかの形があります。
同じ家に暮らして家事や生活費を分担する同居型、書類上は夫婦でも住む場所は別々にしてプライバシーを保つ別居型、平日は離れて週末だけ一緒に過ごす週末婚型。どれが心地よいかは本当に人それぞれで、優劣はありません。自分がどんな距離感で暮らしたいかを先に言葉にしておくと、相手と話すときにブレません。住まいの具体的な選び方は「友情結婚の住居選び(同居・別居・週末婚)」でも掘り下げています。
3. 金銭感覚と経済観
お金の話は、どんな共同生活でも避けて通れません。友情結婚ではむしろ、最初からオープンに話せるかどうかが大きな分かれ目になります。
生活費を折半にするのか収入比で分けるのか、貯蓄をどれくらい意識するか、大きな買い物をどう決めるか、将来の資産形成をどう描くか。恋愛結婚だと「お金の話は野暮」という空気が漂いがちですが、友情結婚はビジネスパートナーに近い関係だからこそ、数字の認識合わせをためらわずにできる方が長く穏やかに続きます。
距離感・家族・人生設計に関わる価値観
残りの3つは、すぐに生活が破綻するわけではないけれど、積もると効いてくる、じわじわ系の項目です。
4. プライバシーの尊重度
友情結婚では、お互いの個人的な時間や空間をどう扱うかも、暮らしの満足度を左右します。
一人の時間がどれくらい必要か、パートナー以外の人間関係(友人、場合によっては恋人)をどう考えるか、相手の予定をどこまで把握したいか、連絡はどの頻度が心地よいか。アセクシャルの方やLGBTの方の中には、同性のパートナーがいる方もいます。そうした関係への理解や、プライベートな時間の確保についても、はじめに認識を合わせておくと後々ラクです。
友情結婚を選ぶ方には「束縛しない関係」を望む方が多いものの、「まったく干渉しない」と「適度に気にかける」は別物です。放っておかれて寂しいのか、放っておいてほしいのか。ここは人によって本当に違うので、心地よい距離感を二人で探っておくといいでしょう。
5. 家族・親族との関係
結婚すると、相手の家族との関係も自然と生まれます。婚姻は民法上の制度なので、入籍すれば法的な権利と義務が発生し、親族づきあいもついてきます。
友情結婚の場合、「なぜ友情結婚を選んだのか」を家族にどこまで話すかが悩みどころになりがちです。親や親族に事情を伝えるのか、家族行事にどの程度参加するのか、将来の介護をどう考えるか、お互いの実家との距離をどう取るか。特にLGBTの方でカミングアウトをしていない場合、説明はいっそう繊細になります。どこまで本当のことを話し、どんな形で家族に向き合うか。これは事前に二人で足並みをそろえておきたいところです。親への伝え方に迷ったら、「友情結婚を親にどう伝える?」も参考になります。
6. キャリアと人生設計
将来どんな暮らしを送りたいか、大きな方向性が重なっているかも見ておきたい点です。仕事と家庭のバランス、転勤や海外移住の可能性、リタイア後のイメージ、人生で成し遂げたいこと。
友情結婚は、人生を共に歩むパートナーを見つけること。五年後、十年後、二十年後を思い描いたとき、お互いの設計図が大きくずれていないか。ここがそろっていると、日々の小さな違いは案外気にならなくなります。
価値観は話し合いですり合わせていける
6つ挙げてきましたが、全部一致する人なんて、まず見つかりません。
それでも問題ないのは、価値観は最初から完璧に合っている必要がないからです。違いが見つかったときに、お互い少しずつ歩み寄れるか。そこさえ動いていれば、ズレは時間をかけて埋まります。
友情結婚は、恋愛感情に頼らないぶん、話し合う力が問われる関係です。「この人となら腹を割って話せそう」と思える相手なら、それだけでかなり前進しています。すり合わせの進め方そのものは「友情結婚でうまくいくコミュニケーション術」に具体的に書いています。
そのまま使える質問例集
価値観を確かめたくても、いざ相手を前にすると切り出しにくいものです。6つの観点ごとに、初対面に近い段階でも使えるフレーズをまとめました。これくらいフラットに聞けば、相手も身構えずに答えてくれます。
- 子どもの希望:「将来の家族構成って、どんなイメージを持っていますか?もし子どもを持つ選択をするなら、何歳くらいまでに考えたいですか?」
- 住居形態:「完全同居・別居・週末だけ同居だったら、どれが一番自分に合っていそうですか?」
- 金銭感覚:「月の生活費って、だいたいどれくらいですか?貯蓄と支出のバランスでは、どちら寄りのタイプですか?」
- プライバシー:「一人の時間って、週にどれくらいほしい方ですか?連絡の頻度はどれくらいが心地よいですか?」
- 家族・親族:「親御さんへはどう説明したいと思っていますか?家族行事はどれくらい出る想定ですか?」
- キャリア:「五年後、十年後はどんな暮らしをしていたいですか?転勤や独立の予定はありますか?」
コツは、はい・いいえで終わらない聞き方にすることです。「子どもほしい?」だと「うーん…」で会話が止まってしまいますが、「何歳くらいまでに?」と尋ねれば、必ず何かしらの返事が返ってきます。
答えの中身より「答え方」を見る
質問の答えそのものと同じくらい、相手がどう答えるかも見ておきたいところです。次のような反応が出たら、少し立ち止まったほうがいいかもしれません。
- ほとんど考えずに「どっちでもいい」と即答する
- 話題をそらして、別の質問で返してくる
- 「結婚してから決めればいいよ」と先送りにする
- 急に不機嫌になる、あるいは笑いに紛らわせる
価値観の中身が違うこと自体は、後からいくらでも擦り合わせていけます。けれど、話し合いそのものから逃げる癖は、なかなか直りません。友情結婚では、たぶんここが一番の見極めどころです。
こうして見極めたうえで「やっぱり自分には友情結婚は合わないかも」と感じることもあります。それも大切な気づきです。「こんな人は友情結婚しないほうがいい」で、自分に向いているかを確かめておくのもいいと思います。
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