「結婚したい」と検索するゲイ男性が思い描いている相手は、人によって違います。いまの彼氏と家族になりたい人もいれば、相手はまだいないけれど一人で歳を取るのは避けたい人、親や職場への説明に疲れた人もいます。誰と何を手に入れたいのかで、取れる道は変わります。
この記事では、2026年10月時点の日本で使える手段を5つ並べて、それぞれ何ができて何ができないかを確認します。男性のパートナーと生きる道が4つ、女性と法律上の結婚をする友情結婚が1つです。
2026年10月時点:日本の同性婚はどこまで進んだか
日本の民法では、同性同士の婚姻届は受理されません。
同性婚を認めない民法などの規定が憲法に反するかを争う訴訟は、全国5か所の裁判所で6件起こされました(北海道、東京1次・2次、愛知、関西、九州)。高等裁判所の判断は違憲が5件、合憲が1件(2025年11月の東京高裁、2次訴訟)に分かれています。最高裁判所は2026年3月25日付で6件の上告を受理し、裁判官15人全員で審理する大法廷に回しました。
大法廷は、法律が憲法に合っているかを判断するときなどに開かれます。ただ、この記事を更新した時点で判決はまだ出ておらず、判決の時期も最高裁からは示されていません。仮に違憲と判断されても、同性婚ができるようになるには国会で法律を変える必要があります。結論が出るまで何年かかるかは、いまの段階では誰にも言えません。
いま選べる道は、次の5つです。
5つの選択肢を比較する
全体を先に表で見ておきます。「法律上の家族」とは、戸籍の上で配偶者や親子として扱われるかどうかを指します。
| 選択肢 | 相手 | 法律上の家族になるか | 相続 | 主な制約 |
|---|---|---|---|---|
| パートナーシップ制度 | 同性パートナー | ならない | なし(遺言が必要) | 効力は自治体の運用の範囲内 |
| 公正証書・遺言・任意後見 | 同性パートナー | ならない | 遺言で財産を遺せる | 一つずつ契約を作る手間と費用 |
| 養子縁組 | 同性パートナー | 親子になる | 子として相続する | 親子関係になる。解消後も婚姻できない |
| 海外での婚姻 | 同性パートナー | 日本ではならない | なし | 日本の戸籍に反映されない |
| 友情結婚 | 女性(主にアセクシュアルなど) | 夫婦になる | 配偶者として相続する(同時に互いを扶助する義務も負う) | 同居と協力・扶助の義務が生じる |
上の4つは「彼と生きる」ための道、最後の1つは「女性と夫婦になる」道です。性格がまったく違うので、表の上で横並びにしても、どちらが得かという比べ方はできません。自分が欲しいのが「彼との関係を守る手段」なのか「法律上の結婚そのもの」なのかを、先に分けておく必要があります。
1. パートナーシップ制度
自治体が、二人がパートナーであることを証明書や受理証明で認める制度です。渋谷区と特定非営利活動法人虹色ダイバーシティの共同調査によると、2025年5月31日時点で530自治体が導入し、人口カバー率は92.5%、登録は9,836件でした。この調査は2025年度をもって終了しています(渋谷区:全国パートナーシップ制度共同調査)。
使える場面は、公営住宅への入居申し込み、公立病院などでの面会や病状説明、企業の福利厚生の一部などです。ただし民法上の効力はありません。相続権も、所得税の配偶者控除も、法定代理人としての立場も生じません。病院や会社がどこまで認めるかも、それぞれの判断に任されています。証明書は、二人を家族として扱ってほしいと周囲に頼むための書類です。法的に守る書類ではありません。
住まいの場面でどこまで効くかは、当事者の宅建士に聞いた「同性パートナーとの部屋探し」に具体例があります。
2. 公正証書・遺言・任意後見(契約で備える)
婚姻で自動的に生じる権利の一部を、二人の間の契約で一つずつ作っていく方法です。公証役場で作る書類には、主に次の3種類があります。
ひとつは、生活費の分担や財産の扱い、関係を解消するときの取り決めを書く合意契約の公正証書です。一部の自治体ではパートナーシップ制度の申請にこれを求めています。次に遺言です。同性パートナーは法定相続人ではないので、遺言がなければ一緒に住んでいた家も預金も、親やきょうだいに渡ります。親が存命の場合、親には遺留分(最低限の取り分)があり、遺言があっても全額を遺せるとは限りません。最後に任意後見契約です。判断能力が落ちたときに財産管理などを任せる相手を、あらかじめ指定しておけます。
もう一つ知っておきたいのが、事実婚に近い扱いをめぐる判断です。2024年3月、最高裁は、殺害された人の同性パートナーが犯罪被害者給付金の「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に当たり得ると初めて判断しました。ただし、この解釈が他の法律にどこまで広がるかは法令ごとに異なり、同性パートナーが事実婚と同じ扱いを一律に受けられるわけではありません。
3. 養子縁組
年上のほうが養親、年下のほうが養子になって、法律上の親子になる方法です(民法793条により、年上の人を養子にすることはできません)。成人同士の普通養子縁組なら、家庭裁判所の許可はいらず、届出だけで成立します。親子なので相続権が生じ、同じ戸籍に入り、病院でも家族として扱われます。
そのかわり、関係は「夫婦」ではなく「親子」です。養子は養親の氏に変わります。民法736条は、養親子だった者同士は縁組を解消した後でも婚姻できないと定めています。将来同性婚が認められたときにこの規定がどう扱われるかは、いまのところ決まっていません。「確実に家族になれる」代わりに「将来の結婚の道を狭めるかもしれない」手段なので、選ぶ前に弁護士へ相談するのが安全です。
4. 海外での婚姻
同性婚を認めている国で、その国の法律に沿って結婚することはできます。居住や国籍の条件は国ごとに違います。
ただし、その結婚は日本では婚姻として扱われません。2023年にフランスで結婚した日本人の女性同士のカップルが兵庫県尼崎市に婚姻届を出したときも、受理されませんでした。相手の国に住み続ける予定があるなら意味は大きい一方、日本で暮らすかぎり、法的な立場はパートナーシップ制度と大きくは変わりません。
5. 友情結婚
友情結婚は、恋愛感情や性的な関係を前提にせず、信頼をもとに結婚する形です。ゲイ男性の場合、相手はアセクシュアル(他者に性的に惹かれない、または惹かれにくい人)やアロマンティック(恋愛感情を抱かない、または抱きにくい人)の女性、レズビアンの女性が多くなります。婚姻届を出す法律上の結婚なので、ここまでの4つと違い、戸籍上の夫婦になります。
同じ理由で、民法752条の「同居し、互いに協力し扶助する」義務も負います。配偶者控除や相続も、相手が支えてくれる約束ではありませんし、二人とも働いていれば税の優遇はほとんどありません。権利だけ受け取って負担は引き受けない、という結婚にはなりません。
友情結婚の仕組みそのものは「友情結婚とは?」で説明しています。





