MITRA
ブログ一覧に戻る
| はる| 約4分で読めます

友情結婚の契約書・婚前契約|何を決めておくべきか、作り方と注意点

このブログには「それぞれの終わり始まり」というシリーズがある。
ケース1は、4か月で離婚したゲイの男性とアセクシャルの女性の話だった。
ケース2は、結婚7年目をむかえたレズビアンの女性とゲイの男性の話で、ふたりは結婚の前に婚前契約書を作っていた。
続いている理由をひとつに絞ることはできない。
それでも二本を並べて読むと、紙の上で話し合った時間の量が、ずいぶん違うように見える。

ケース2のふたりは、毎年結婚記念日のころに契約書を読み返しているという。
片方があとから子どもを望むようになったら改めて話し合う、という条項まで入れてあった。
僕が気になったのは、条項の中身より、その一行を書くまでにふたりが交わしたはずの会話のほうだ。

二種類の「契約」

婚前契約と言うとき、日本では二つのものが混ざりやすい。

一つは、民法に定められた「夫婦財産契約」。
婚姻届を出す前に、結婚後の財産をどう管理するかを決めて登記する制度で、婚姻後は原則として変えられない。
手続きが重く、知っている人も少ないので、実際に使っている人はほとんどいない。

もう一つが、ふたりの間で自由に取り決めて文書にする「婚前契約書」だ。
英語ではプレナップ(Prenuptial Agreement)と呼ばれる。
友情結婚で話題になるのは、たいていこちらになる。

何を書くのか

取材で会ったミナさん(アセクシャル・30代)とコウさん(ゲイ・30代)は、婚姻届を出す二か月前、ミナさんの部屋のダイニングテーブルで契約書の下書きをしていた。
ノートには、話し合う項目が鉛筆で並んでいた。

  • 結婚前からの財産(特有財産)と、結婚後に二人で築く財産の分け方
  • 生活費の負担割合、大きな買い物の決め方
  • 住む部屋の間取り、個室の使い方、家事の分担
  • パートナー以外との恋愛関係をどこまで認めるか
  • 子どもを持つかどうか、養子縁組の可能性
  • 親族との付き合い方、親の介護が必要になったときのこと
  • 離婚を考えるときの条件、財産の分け方、慰謝料の有無

いちばん長く止まっていたのは、外の恋愛関係の行だった。
コウさんには、当時つき合っている人がいた。
「家には連れてこない」で合意しかけたところで、ミナさんが「じゃあ、泊まりは何日まで?」と聞いた。
コウさんはしばらく黙って、それから笑った。
「そこまで決めるの」。
決めた。
月に二泊まで、前の週に伝える。

項目を見ると冷たいリストに見える。
でも実際の下書きの場面は、こういう小さな沈黙の積み重ねだった。
曖昧にしておけば楽な行ほど、あとで相手を傷つける行になるのだろうと思う。

友情結婚、気になったら

まずは無料で登録して、どんな人がいるか覗いてみませんか。

紙の力が届くところ、届かないところ

二人が合意した内容は、基本的には契約として有効だ。
ただ、公序良俗に反する条項は無効になる。
「浮気をしたら1億円払う」のような現実離れした約束や、一方だけに極端に不利な内容は、裁判で認められない可能性がある。

もう一つ知っておきたいのは、婚前契約書そのものには強制執行の力がないということだ。
相手が約束を守らなくても、すぐに取り立てられるわけではなく、訴訟を起こす必要がある。
公証役場で公正証書にしておき、強制執行を受け入れる文言を入れておけば、お金の支払いに関する条項については、裁判をせずに強制執行ができるようになる。

作るときのこと

どちらか片方が書いた案を、もう片方が読んでうなずくだけの契約は、たぶん長くもたない。
時間はかかるけれど、項目を一つずつ二人で声に出して決めたほうがいい。
ミナさんとコウさんは、下書きに三週間かけた。

法律の知識がないまま書くと、意図しない意味に読める文になることがある。
弁護士や行政書士に見てもらうと、費用は数万円程度からかかるけれど、そのぶん言葉の穴はかなり塞がる。

それから、見直しの時期を最初から決めておくこと。
結婚したときに決めたことが、五年後も十年後も合っているとは限らない。
ケース2のふたりが記念日に読み返しているのは、たぶんそのためだ。

契約書は、関係を守ってくれる鍵ではないと僕は思っている。
鍵というより、ふたりがどんな話をしたかの記録に近い。
だから書いたあとで、記録にない出来事が起きたときに、もう一度テーブルにつけるかどうかのほうが、ずっと大きい。

ミナさんの部屋を出るとき、ノートの最後のページに「見直し:毎年8月」と書いてあるのが見えた。
その下に、まだ何も書かれていない行が三つあった。

※この記事の体験談は、プライバシー保護のため一部を変更しています。

友情結婚についてもっと知りたい方へ

友情結婚マッチングアプリ「MITRA」で、あなたらしいパートナーシップを見つけてみませんか。

関連記事

友情結婚中に自分の時間を確保する方法|パートナーと暮らしながら心の余裕を保つセルフケア術

友情結婚中に自分の時間を確保する方法|パートナーと暮らしながら心の余裕を保つセルフケア術

友情結婚で同居していても、一人の時間はちゃんと要る。夜九時に閉まる個室のドア、同じ趣味どうしのすれ違い、疲れに気づくための一行メモ。取材で出会った暮らしから、はるが考えたこと。

•はる
「ひとりが好き」でも友情結婚はできる?|内向的な人が無理なく続ける3つの距離感

「ひとりが好き」でも友情結婚はできる?|内向的な人が無理なく続ける3つの距離感

ひとりの時間が好きな自分に、パートナーなんて必要なのか。そんな問いを抱えながら友情結婚を選んだ人たちがいる。内向的な人ならではのパートナーシップのかたちについて考えてみた。

•はる
MITRAは2周年を迎えました

MITRAは2周年を迎えました

友情結婚マッチングアプリMITRAは2周年を迎えました。代表の八郎が、MITRAを始めた理由、この2年でできるようになったこと、退会アンケートから見えたこと、宣伝をしない理由、これからの1年について書きました。

•ミトラ編集部
友情結婚とメンタルヘルス|パートナーと支え合うために

友情結婚とメンタルヘルス|パートナーと支え合うために

季節性うつのように調子が落ちる時期を、同じ家で暮らす友情結婚の二人はどう伝え合うか。助けてもらうための結婚にしないという運営の考えと、専門家・相談窓口の頼り方。

•ミトラ編集部
友情結婚と職場でのカミングアウト|言わない選択も、言う選択も

友情結婚と職場でのカミングアウト|言わない選択も、言う選択も

友情結婚をしたあと、職場にどこまで話すか迷いますよね。セクシュアリティや結婚の形について、カミングアウトする人もしない人もいます。どちらが正解というわけではなく、自分にとって心地よい選択ができればいい。そんな話をまとめました。

•ミトラ編集部