「友情結婚って、結局すぐ別れるんでしょ」。そう言われると、言い返しにくい。恋愛でつながっていないぶん脆そうに見えるし、検索すれば「友情結婚の離婚率は60%」みたいな数字も出てくる。
ただ、その60%がどこから来たのかをたどると、話が少し変わってくる。
「離婚率60%」の出どころ
先に結論を言うと、友情結婚の離婚率を示す公式な統計は、どこにもない。国の調査にも研究機関の論文にも、「友情結婚だけを抜き出した離婚率」という集計は存在しない。ネットで見かける「60%」「70%」は、たどると個人の感覚値か、ごく狭い範囲の聞き取りに行き着く。
MITRAの運営に近いスタッフが知人の範囲で見聞きしたかぎりでも、友情結婚後の離婚は体感で6割くらい、婚約解消まで入れるともっと多い、という肌感はあった。ただ、これを「離婚率は60%」と言い切るのは乱暴だ。母数が小さいし、うまくいかなかった話のほうが記憶に残りやすい。数字としては当てにならない、というのが実際のところだ。
厚労省のデータで、結婚そのものの離婚を見る
恋愛結婚も含めた全体の話なら、まともな数字がある。厚生労働省の人口動態統計によると、2024年の離婚件数はおよそ18万6千組、人口千人あたりの離婚率は1.55。同じ年の婚姻は約48万5千組なので、規模感としては「結婚する人数に対して、その年に離婚する人がだいたい4割前後」になる。
注意したいのは、この4割が、同じ年に結婚したペアの離婚という意味ではないこと。ある年の結婚と離婚は別のペアの話なので、「3組に1組が離婚」みたいな言い方は厳密にはかなり雑だ。それでも、恋愛で始まった夫婦がこれだけ別れているのは確かで、恋愛感情があれば安定する、という前提自体がそもそも怪しい。厚労省の離婚に関する統計を見ると、同居期間が短い時期の離婚が一定数ある。暮らし始めて数年が、どんな夫婦でも最初の山場ということだろう。
だから問うべきは「友情結婚かどうか」ではなく、「何が二人を続けさせるか」のほうだと思う。
そもそも、どういう人が選ぶのか
前提を少しだけ。友情結婚は、恋愛感情や性的な関係を前提とせず、合意と信頼をベースに家族になる結婚だ(詳しくは友情結婚とは)。誰かと暮らしたい、家族がほしい、でも恋愛という形はしっくりこない。動機はだいたいこのあたりに集まる。
友情結婚専門の結婚相談所のデータでは、入会する男性の約8割がゲイ、女性の約9割がアセクシャル(他者に恋愛的・性的に惹かれにくい人)やノンセクシャルだという。ときめきはなくても「この人となら生きていける」という確信はある。それを二人でどう守るかで、続くかどうかが決まる。
「壊れやすい」と言われる理由
うまくいかなかったケースは、原因が似たところに集まる。
最多は、暮らし始めてからの価値観や生活習慣のズレだ。「恋愛感情がないぶん冷静に選べる」はずが、いざ同居すると洗い物のタイミングひとつでイラつく。恋愛の高揚感がないぶん、小さな摩擦をごまかしてくれるものがない。
コミュニケーション不足も効く。「好き」でつながっていない関係は、放っておくと急速に他人へ戻る。「言わなくてもわかるでしょ」が一番危ない。
子どもの考え方の違いも、後からじわじわくる。望むなら年齢が現実的な制約になるのは事実で、ここは目をそらさないほうがいい。アプリ登録から対面、関係づくり、入籍、妊活開始まで、現実には最短でも1〜2年かかる。受け身で待つコストは年齢が上がるほど重い。曖昧にしたまま入籍すると、いざ話し合ったときに溝が出る。
友情結婚特有のテーマだと、外部の恋愛パートナーをめぐるルールがある。ゲイやレズビアンの人だと、結婚相手とは別に恋愛相手を持つ前提のケースも珍しくない。ここの線引きが甘いと「外で過ごす時間が増えすぎた」「約束が破られた」でほころぶ。短期間で別れた例は4ヶ月で離婚に至った話に書いた。ほかにお金の感覚差や、友情結婚でも無縁ではないDV・モラハラもある(お金まわりは友情結婚のお金の管理)。恋愛という接着剤がないぶん、信頼を一から丁寧に積まないと生活が立ち行かない。裏返せば、そこさえ守れれば続くということでもある。
続いている二人が、地味にやっていること
長く穏やかに続けている人たちを見ていると、派手なテクニックはない。地味なことばかりだ。
定期的に話す時間を、意図して作っている。月一でいいから「最近どう?」と向き合って座る。これをやめた途端に距離が開く(話し方に迷うなら友情結婚のコミュニケーション術を)。
生活のルールを結婚前に決めているのも共通点だ。家事、お金、生活リズム、外の恋愛についての約束。曖昧なまま入籍して、後から揉めるのを本当によく見る。そして決めたルールは守る。報告の頻度ひとつでも、破られると信頼は一気に崩れる。
あとは本音を言える空気。遠慮して飲み込んでいると、いつか爆発する。「ちょっと言いにくいんだけど」と切り出せる関係を耕しておく。相手の価値観が自分と違っても、否定から入らない。続いている二人には、たいていこれがあった。うまくいった例はMITRAで出会って結婚するまでの話に。
婚活の段階で出る「赤信号」
別れや婚約解消に至ったケースは、婚活の時点で違和感があったのに見て見ぬふりをした、というパターンが多い。次に複数あてはまる相手とは、入籍前にもう一度踏み込んで話しておいたほうがいい。
- 価値観の話になると話題をそらす、または即「なんでもいいよ」で済ます
- お金の話を「結婚してから決めよう」と先送りにする
- 外での恋愛関係をルール化するのを嫌がる
- 家族には友情結婚だと隠す前提で話を進める
- こちらの意見を否定する言い方が多い(「それは違うよね」が口癖)
- 生活リズムや仕事の事情を聞くと「そこまで聞く?」と不機嫌になる
一つでも引っかかったら、流さずにその場で質問を重ねる。丁寧に説明してくれる人なら、たぶん大丈夫。明確に逃げる人は、結婚後に同じ話題でもっと大きくこじれる。聞きにくいことを先に聞いた人ほど、結局は長く続く相手に当たっている(婚活アプリで受け身にならない話)。
こういう話を安心して進められるかは、出会いの場の作り方にもよる。MITRAはプライバシーポリシーを明示して、セクシュアリティを開示しやすい前提で運営しているが、どのサービスを使うにせよ、相手の情報や運営の姿勢を確かめる手間は惜しまないほうがいい。
離婚率の数字は、結局のところ一組ずつの結婚の中身までは教えてくれない。60%だろうが何だろうが、続くかどうかを決めるのは、そのあと二人がやることのほうだ。
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