「恋愛感情がないなら、嫉妬もないし、感情的な喧嘩も少ないんじゃない?」
友情結婚について話すと、そんな反応をもらうことがあります。たしかに、恋愛結婚にありがちな「好きだからこそ許せない」みたいな感情のもつれは起きにくいかもしれません。
でも、友情結婚には友情結婚の難しさがある。
友情結婚をしている方の話を聞いていると、うまくいっている方もいれば途中で関係を解消した方もいます。その中で見えてきた「友情結婚がうまくいかなくなるパターン」について書いてみます。
「愛情がない」ことの意味
友情結婚では恋愛感情がありません。それは最初からお互いにわかっていること。でもこれが意外と難しい。
恋愛結婚だと、多少のすれ違いがあっても「まあ、好きだから」で乗り越えられることがあります。相手の嫌なところが見えても、「でもこの人が好きだから」という気持ちが緩衝材になる。感情的になって喧嘩しても、仲直りのきっかけは「やっぱり一緒にいたい」という気持ちだったりする。
友情結婚にはこの緩衝材がない。何か問題が起きたとき、感情ではなくロジックで解決する必要があります。それができる関係ならいいのですが、できないと小さなズレがどんどん大きくなっていく。歯車が噛み合わなくなっていく感覚、と表現した方がいました。
「理想の友情結婚」と現実のギャップ
友情結婚を始める前、多くの人がこんなイメージを持っています。「家事は完全に半々で分担できるはず」「お互いの時間を尊重して干渉しない関係になれるはず」「恋愛じゃないから冷静に話し合いができるはず」。
実際に一緒に暮らし始めると、そうもいかないことに気づきます。家事の分担は仕事の忙しさや得意不得意で偏りが出ることもある。プライベートを尊重するつもりでも、生活リズムが違いすぎるとストレスになる。冷静に話し合えるはずが、そもそも「何が問題なのか」の認識がずれていて話し合いにならないこともある。
恋愛結婚でも起きることですが、友情結婚の場合は「最初からドライな関係」という前提があるぶん、期待とのギャップが大きく感じられることがあるようです。
周囲に言えない孤独
友情結婚をしていることを周囲にオープンにしている人は少数派です。
親には「普通の結婚」として報告していたり、職場では当然のように夫婦として振る舞っていたり。それ自体は問題ないのですが、困るのは何か悩みがあるとき。恋愛結婚なら「最近旦那と喧嘩してさ」と友達に愚痴れますが、友情結婚だとそうもいかない。「実は恋愛感情のない結婚なんだよね」という前提から説明しないといけない。でもそれを言える相手は限られている。
結果としてパートナーとの問題を一人で抱え込んでしまう。相談相手がいないことで、小さな問題が大きくなってしまうケースがあります。
うまくいっている人たちの共通点
一方で、長く良い関係を続けている方たちもいます。その人たちに共通していることがいくつか見えてきました。
「期待値のすり合わせ」を最初にしっかりやっていること。生活費の分担、家事の役割、休日の過ごし方、将来の計画。結婚前の段階でかなり具体的に話し合っている。「なんとなく」で始めていない。書面に残している人も少なくありません。
「定期的な見直し」をしていること。最初に決めたルールがずっとそのまま機能するとは限りません。仕事の状況が変わったり、体調を崩したり、気持ちが変わったりすることはある。そのときに「最初に決めたから」で押し通すのではなく、「今の状況に合わせて調整しよう」と話し合える関係かどうか。
「お互いの人生を応援できる関係」であること。友情結婚は恋愛関係ではありません。でもだからといって「ただの同居人」でもない。相手の仕事がうまくいったら一緒に喜べる、相手が落ち込んでいたら気にかける。そういう関係性がある人たちは長く続いている印象があります。
「失敗」は悪いことじゃない
友情結婚を解消した方の話を聞いていると、「失敗した」という言葉をよく聞きます。友情結婚のリアルな体験談を読むと、うまくいった側・いかなかった側の両方の声が参考になります。
でも、本当に失敗なのか。合わなかったとわかったこと、自分が何を大切にしているかわかったこと、一人で生きていくことへの考え方が変わったこと。そういう経験を経て次のステップに進んでいる方もいます。
友情結婚は「一度始めたら絶対に続けなければいけないもの」ではない。お互いにとってプラスにならないなら、解消するという選択もある。それは「失敗」というより、「合わなかった」というだけのこと。
始める前にできるだけ具体的に話し合うこと、始めた後も話し合い続けること。友情結婚に限らずどんな関係にも言えることかもしれませんが、恋愛感情というクッションがないぶん、友情結婚ではより意識的にやる必要がある。パートナーを探すとき、「この人と具体的な話ができそうか」という視点でも相手を見てみてください。それが、長く続く関係への第一歩になるはずです。
パートナーとの関係に悩んだときは、一人で抱え込まず専門家の力を借りることも大切です。法務省の人権相談窓口「みんなの人権110番」では、パートナーシップに関する悩みも相談できます。




