世界が「結婚の形」を選べる時代に動いている
ここ10年で、世界の結婚制度はかなり動いた。同性婚を法的に認める国・地域は40近くに増え、パートナーシップ制度まで含めれば、もっと多くの場所で多様なカップルのあり方が制度として守られるようになってきた。
日本も例外じゃない。同性婚を認めない現行の規定をめぐる訴訟は全国6件が高裁まで進み、2026年には最高裁の大法廷で審理されることが決まった。統一的な判断が出るのを、当事者も支援団体もずっと待っている状況だ。自治体レベルの動きはもっと速くて、パートナーシップ制度を導入した自治体は2026年時点で500を超え、人口でいえば9割以上をカバーするところまで来ている。10年前、最初に渋谷区と世田谷区が始めたときは「珍しい取り組み」だったのに、今は「ない自治体のほうが少数派」になりつつある。こうした制度の広がりは、結婚の自由をすべての人に(Marriage For All Japan)が訴訟支援や政策提言を続けてきたことも後押しになっている。
この流れの中で、友情結婚も「恋愛と結婚を切り離す選択肢」のひとつとして、前より自然に語られるようになった。恋愛結婚でも、同性婚でも、友情結婚でも、事実婚でも、自分に合った形を選べる社会にようやく近づいている。ただ、どの形にもそれぞれの難しさがあるのも事実で、ここからは友情結婚特有の「うまくいかなくなるパターン」と、その立て直し方を具体的に書いていく。友情結婚そのものの仕組みをまず押さえたい人は、友情結婚とは?メリット・デメリット・始め方を先に読むと話が早い。
ここで先に、いちばん多い思い込みを潰しておきたい。「恋愛感情がないなら、嫉妬もないし、感情的な喧嘩も少ないでしょ?」という反応は、友情結婚の話をするとよく返ってくる。たしかに、恋愛結婚にありがちな「好きだからこそ許せない」という感情のもつれは起きにくいかもしれない。でも、それと「揉めない」はイコールじゃない。
友情結婚をしている人の話を聞いていると(以下のエピソードはプライバシー配慮のため一部フェイクを含みます)、長くうまくいっている人もいれば、途中で関係を解消した人もいる。両者の違いを見ていくと、「恋愛がないから楽だ」と思い込んでスタートした人ほど、後でつまずいているケースが目立つ。恋愛という燃料がない代わりに、別のもので関係を動かす必要があるのに、それを用意しないまま走り出してしまうからだ。その「別のもの」が何なのか、原因を5つに分けて見ていく。
原因①:もめたときに使える「緩衝材」がない
友情結婚には恋愛感情がない。これは最初からお互いわかっていることだけど、いざ生活が始まると意外と効いてくる。
恋愛結婚なら、多少すれ違っても「まあ、好きだから」で乗り越えられる瞬間がある。相手の嫌なところが見えても、「でもこの人が好きだし」という気持ちがクッションになる。喧嘩しても、仲直りのきっかけが「やっぱり一緒にいたい」だったりする。
友情結婚にはこのクッションがない。何か問題が起きたとき、感情の勢いで押し切れない分、ロジックで解決するしかない。それができる関係ならむしろ強いんだけど、できないと小さなズレがそのまま残って、どんどん積もっていく。「歯車が噛み合わなくなっていく感覚だった」と表現した人がいた。立て直すなら、もめたときの解決ルールを先に決めておくこと。感情に頼れないなら、手順に頼ればいい。
原因②:「理想の友情結婚」を現実と取り違えている
始める前、多くの人がこんなイメージを持っている。「家事は完全に半々で分担できるはず」「お互いの時間を尊重して干渉しない関係になれるはず」「恋愛じゃないから冷静に話し合えるはず」。
実際に暮らし始めると、そう単純じゃないことに気づく。家事の分担は、仕事の忙しさや得意不得意でどうしても偏る。プライベートを尊重するつもりでも、生活リズムが違いすぎればストレスになる。冷静に話し合えるはずが、そもそも「何が問題なのか」の認識がずれていて、話し合いの土俵にすら乗らないこともある。
恋愛結婚でも起きることではあるけれど、友情結婚は「最初からドライな関係」という前提があるぶん、理想とのギャップが大きく感じられやすい。理想を捨てる必要はない。ただ、理想は「最初から手に入っているもの」じゃなくて「すり合わせて作っていくもの」だと捉え直すと、現実とのギャップに足を取られにくくなる。
原因③:周囲に言えなくて、一人で抱え込む
友情結婚をしていることを周囲にオープンにしている人は、まだ少数派だ。
親には事情を伏せて報告していたり、職場では当然のように夫婦として振る舞っていたり。それ自体は別に問題ない。困るのは、悩みが出てきたときだ。恋愛結婚なら「最近パートナーと喧嘩してさ」と友達に軽く愚痴れる。でも友情結婚だと、「実は恋愛感情のない結婚なんだよね」という前提から説明しないといけないことがある。その前提を話せる相手は、どうしても限られる。
結果として、パートナーとの問題を一人で抱え込んでしまう。相談相手がいないせいで、本来なら小さく済んだ問題が大きく育ってしまう。立て直すには、最初から「ここでは話せる」という相手や場所をひとつ確保しておくこと。全員にオープンにする必要はないけど、ゼロだとしんどい。親への伝え方で悩んでいるなら、友情結婚を親にどう伝える?も参考になる。
原因④:「失敗」を恐れて、立て直しのタイミングを逃す
友情結婚を解消した人の話を聞くと、「失敗した」という言葉がよく出てくる。でも、本当に失敗なんだろうか。
合わなかったとわかったこと、自分が何を大切にしているか見えたこと、一人で生きることへの考え方が変わったこと。そういう経験を経て、次のステップに進んでいる人も多い。友情結婚は「一度始めたら絶対に続けなきゃいけないもの」じゃない。お互いにとってプラスにならないなら、解消するのも立派な選択だ。それは「失敗」というより「合わなかった」というだけのこと。
問題なのは、「失敗だと思われたくない」という気持ちが先に立って、見直すべきタイミングで見直せなくなることのほうだ。関係は固定じゃない。半年に一度くらい「今のままで合ってるか」を二人で点検する習慣があると、致命傷になる前に軌道修正できる。
なお、子どもを希望しているなら、この「見直しの先延ばし」のコストは年齢が上がるほど重くなる現実がある。友情結婚の場合、登録から対面、入籍、妊活まで考えると最短でも1〜2年は見ておく必要があって、受け身でいる時間そのものが選択肢を狭める。何歳までと断定はできないけれど、ほしいなら早めに動くに越したことはない。もちろん、子どもを持たない関係を選ぶのも対等な選択で、そこに優劣はない。
原因⑤:最初の「話し合い」が浅いまま走り出す
ここまでの4つを裏返すと、長くうまくいっている人たちの共通点が見えてくる。
ひとつは、「期待値のすり合わせ」を最初にしっかりやっていること。生活費の分担、家事の役割、休日の過ごし方、将来の計画。結婚前の段階でかなり具体的に話し込んでいる。「なんとなく」で始めていないし、決めたことを書面に残している人も少なくない。
もうひとつは、「定期的な見直し」を当たり前にしていること。最初に決めたルールがずっと機能し続けるとは限らない。仕事の状況が変わったり、体調を崩したり、気持ちが動いたりする。そのときに「最初に決めたから」で押し通すんじゃなくて、「今に合わせて調整しよう」と言い合える関係かどうかが、長続きの分かれ目になる。
そして、お互いの人生を応援できること。友情結婚は恋愛関係ではないが、かといって「ただの同居人」でもない。相手の仕事がうまくいったら一緒に喜べて、落ち込んでいたら気にかける。そういう関係を保てている人たちは、やっぱり長く続いている。二人の関係も、一度決めたら終わりではなく、状況に合わせて選び直し続けるものだ。そう思っておくと、たいていのつまずきは途中で立て直せる。
パートナーを探す段階から、「この人と具体的な話ができそうか」という視点で見ておくと、後がだいぶ楽になる。うまくいった側といかなかった側、両方の声は友情結婚のリアルな体験談で読める。
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