「恋愛しない自分はおかしいのか」。
この問いを、僕も何年か抱えてました。
でもあるとき気づいたんですよ。
問いの立て方からしてずれてない?って。
「おかしい」って、何と比べて?
僕はゲイで、家族にも職場にもまだ言ってません。
恋愛対象は男性なので「恋愛しない」とは少し違うんですけど、女性と恋愛して結婚して、という周りが当然だと思ってるルートに乗れないって点では、同じ場所に立ってる気がしてます。
高校のころ、昼休みに友達が彼女の話で盛り上がるたび、僕は話を合わせるための架空の「気になる子」を用意してました。
名前もクラスも決めてた。
今思うとけっこう手間をかけてたんですよね。
で、その手間をかけるたびに「自分はどこか壊れてるんじゃないか」と確かめてた。
いや、ちょっと待って。
「おかしい」って、多数派と比べてずれてるって意味でしょ? ずれてるのは事実です。
でも、ずれてることと壊れてることは別の話じゃないですか。
左利きの人を壊れてるとは誰も言わないわけで。
38人という数字
友情結婚について調べはじめて、最初に「ほら、やっぱり」となったのが、MITRAの運営が出している1周年の記事でした。
2024年10月30日の正式オープンから1年で、運営が確認できた「パートナー成立」は38人。
内訳は退会時の報告が17人、SNSでの投稿が8人、プロフィールの変更から推測したのが7人、直接の問い合わせが6人です。
報告せずに辞めた人も含めると79人くらいではないか、と運営は見積もっていて、2組はすでに結婚。
どちらも「子どもを持ちたい」という希望が一致していたそうです。
38人は多い数字じゃないですよ。
でも僕にとって大事だったのは数の大小じゃなかった。
恋愛感情を前提にしないアプリで相手を見つけて退会していった人が、確認できただけで38人いる。
「恋愛しない人は結婚できない」という思い込みには、この時点で反例が38個あるわけです。
友達のミナミさんが言ったこと
大学の同期にミナミさん(仮名)という女性がいます。
人に恋愛感情を持ったことがないと、20代半ばで僕にだけ打ち明けてくれました。
アセクシャルという言葉を知ったのはそのあとだったそうです。
彼女、最初は友情結婚にかなり否定的でした。
「恋愛できない自分の逃げ道にしてるみたいで嫌だ」って。
逆に聞きたいんだけど逃げ道の何が悪いの、と僕は言ったんですが、彼女の答えは違いました。
逃げ道として選んだら、一緒に暮らす相手に失礼でしょ、と。
これはミナミさんのほうが正しかった。
MITRAの運営は、自分の得だけが目的の人と、異性に恐怖を感じる人には友情結婚を勧めないとはっきり書いています。
同じ家で生活を共にする前提だから、怖がりながら暮らすのは本人にも相手にも負担になる、という理由です。
友情結婚は「恋愛できない人の避難所」としては作られてない。
自分が何を持っていて、相手に何を差し出せるかを言える人のための選択肢なんです。
ミナミさんはそこから、自分について分かっていることを紙に書き出したそうです。
恋愛はしない、人と暮らすのは嫌いじゃない、料理は自分がやりたい、朝は弱い。
「直すべきところのリストじゃなくて、取扱説明書を作った感じ」と言ってました。
好きになれなくても受け入れられる
心理学でいう自己受容(セルフアクセプタンス)は、自分の好きなところも好きになれないところも含めて「これが今の自分だ」と認めることを指します。
自分を好きになることとは別物で、好きになれなくても受容はできる。
僕はこの区別を知ってだいぶ楽になりました。
ゲイである自分を好きかと聞かれたら、日によります。
実家で彼女はいないのかと聞かれて笑ってごまかした日は、全然好きじゃない。
でも、そういう自分がいることは認められる。
認めたうえで、じゃあどう暮らすかという次の問いに進めるわけです。
ちなみに僕はまだ家族に言えてないので、この記事を書きながら、言えてない人間が自己受容を語っていいのかとも思いました。
まあ、受け入れることと人に公表することは別の話ですよね。
たぶん。
しんどさが一人で抱えきれないときは、法務省の人権擁護局がLGBTQ+に関する人権相談も受け付けています。
電話でも相談できるので、誰にも言えていない段階の人でも使えます。
「恋愛しない自分はおかしいのか」という問いは、僕はもう捨てました。
いま持っているのは「自分は相手に何を差し出せるか」という問いで、こっちのほうが考えがいがある。
友情結婚についてもっと知りたい方へ
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