「みんなは普通に恋愛して、普通に結婚していくのに、どうして自分だけ違うんだろう」
そんなふうに思ったことはありませんか。友情結婚を考える方の中には、長い間この問いと向き合ってきた人が少なくありません。
「普通」という呪縛
20代後半のユキさん(仮名)は、学生時代からずっと恋愛に興味が持てませんでした。周りの友達が彼氏の話で盛り上がる中、話を合わせることに疲れ、次第に自分を責めるようになったといいます。
「何かが欠けているんじゃないかって、ずっと思ってました。病院に行ったほうがいいのかなとか、真剣に悩んだ時期もあります」
こうした経験は珍しいことではありません。恋愛至上主義の社会では、恋愛しない・できないことが「異常」のように扱われがちです。でも、本当にそうなのか。アセクシャルという生き方について知ることで、自分を理解するきっかけになった人も多いです。
自己受容という考え方
心理学では「自己受容(セルフアクセプタンス)」という概念があります。自分の良いところだけでなく、自分ではあまり好きではない部分も含めて、ありのままの自分を受け入れるということです。
自己受容は「自分を好きになること」とは少し違います。好きになれなくてもいい。ただ、「これが今の自分だ」と認めること。それだけでも、心はずいぶん軽くなります。
恋愛しない自分を「直すべき欠点」ではなく「自分の一部」として受け入れられたとき、ユキさんの中で何かが変わったそうです。
「恋愛しないことを隠すのをやめたんです。友達にも話すようになって。意外と『そうなんだ』って普通に受け入れてくれる人が多くて、拍子抜けしました」
友情結婚という選択肢
自分を受け入れられるようになると、人生の選択肢が広がります。
恋愛結婚だけが結婚ではない。パートナーと恋愛感情がなくても、信頼と尊重をベースにした穏やかな暮らしを築ける。友情結婚を知ったとき、「これだ」と感じる人は多いです。
30代のタケシさん(仮名)は、ゲイであることを自覚しながらも、家庭を持ちたいという気持ちがありました。
「同性パートナーと暮らすことも考えましたが、僕の場合は子どもが欲しかったんです。でも恋愛感情のない女性と結婚するなんて、相手に失礼じゃないかとずっと悩んでいました」
友情結婚という形を知り、同じように考える女性がいることを知ったとき、タケシさんの中にあった罪悪感は消えていったといいます。
「お互いの事情を理解した上で、対等なパートナーとして一緒に暮らす。それって全然失礼じゃないし、むしろ誠実な関係だと思えるようになりました」
受け入れてもらえる安心感
自己受容ができると、不思議と周りからも受け入れてもらいやすくなります。自分を偽らずにいられると、相手にも安心感が伝わるのかもしれません。
法務省の人権擁護局でもLGBTQ+に関する相談を受け付けており、社会全体の理解は少しずつ進んでいます。電通グループの調査(2023年)では、LGBTQ+当事者からカミングアウトされた場合、非当事者の84.6%が「ありのまま受け入れたい」と回答しています。思っているよりも、世の中は優しいのかもしれません。
友情結婚を考えている方には、自分自身と向き合う時間を持ってほしいと思っています。「恋愛しない自分はダメだ」という思い込みを手放すこと。それが、新しい人生を歩き出す第一歩になるはずです。
焦らなくていい
自己受容は一朝一夕でできるものではありません。何年もかけて少しずつ折り合いをつけていく人もいれば、ある日突然腑に落ちる人もいます。
周りと自分を比べて焦る必要はありません。あなたのペースで、あなたの人生を歩んでいけばいい。友情結婚はその選択肢のひとつに過ぎません。
もし今、「自分はおかしいのかも」と悩んでいるなら、同じような経験をした人の話を聞いてみてください。同じ道を歩んできた仲間がたくさんいます。一人で抱え込まずに、まずは誰かとつながることから始めてみてもいいかもしれません。
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