「友情結婚だと相続はどうなりますか」という質問への答えは短くて、婚姻届を出していればほかの婚姻と同じです。
民法は「配偶者は、常に相続人となる」と定めていて、二人のあいだに恋愛感情があったかどうかを問う条文はありません。
そもそも「友情結婚」という言葉は法律のどこにも出てこない。
法律から見れば、あるのは婚姻届を出した二人だけです。
ですから、この記事で考えたいのは「同じ」が崩れる場所のほうです。
崩れる場所は、少なくとも三つあります。
一つ目:婚姻届を出していない場合
婚姻届を出していない事実婚や、同性のパートナーは、法律上の配偶者にあたりません。
何十年一緒に暮らしていても法定相続人にはならず、自治体のパートナーシップ制度を使っていても、この点は変わりません。
婚姻届を出した友情結婚の配偶者は、必ず法定相続人になります。
子どもがいれば配偶者と子ども、子どもがいなければ配偶者と親(親がいなければ祖父母)、そのどちらもいなければ配偶者と兄弟姉妹、という組み合わせで遺産を分けます。
二つ目:親族との関係
法律の扱いが同じでも、相続の場面に集まる人の顔ぶれは同じとは限りません。
友情結婚の夫婦の中には、お互いの家族に結婚の事情を伝えていない人もいます。
そうなると、相続が発生したときに、相手の親や兄弟姉妹と初めてまともに話す、ということも起こりえます。
ここは法律ではなく二人の取り決めで埋める部分です。
相手の家族とどこまで付き合うか、財産のことをどこまで共有しておくか。
それぞれの終わり始まり ケース2で紹介した結婚7年目の夫婦は、結婚前に婚前契約書を作り、生活費や家事の分担を書面にしていました。
お金の扱いを紙に書く習慣がある二人なら、財産の話もその延長で切り出せます。
三つ目:相続を目当てにする場合
三つ目は動機の問題です。
婚姻届を出せば相続権が生じる。
これは事実です。
ただ、それを友情結婚を選ぶ理由にする人には、MITRAは友情結婚を勧めていません。
相続権は、相手が先に亡くなったときに初めて意味を持つ権利です。
相続を当てにして結婚するというのは、恋愛感情のない相手の死を、自分の得の計算に入れて結婚するということになります。
運営はそれを対等な関係とは呼びません。
それに、権利は片方にだけ生じるものではありません。
自分が先に亡くなれば、自分の財産が相手に渡る。
共働きで、それぞれが自分の暮らしを自分で支えている二人のあいだで、どちらが得をするかは誰にも分からない。
分からないものを結婚の理由にするのは、論理として成り立っていないと考えます。
(ついでに言うと、「婚姻届を出しておけば、いざというとき助けてもらえる」という考えも同じ構造をしています。
相手が実際に動くかどうかは、書類ではなく、それまでの生活で決まる。)
備えとして知っておく制度
そのうえで、二人の意思を法律の決まりより優先させたい場合の手段を挙げておきます。
一つは遺言書です。
法定相続の割合では自分の考えが反映されない場合、たとえば「住んでいる家はパートナーに、預貯金は親に」と振り分けたいときや、友人や団体に財産を残したいときに使います。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、形式の不備で無効になるのを避けたいなら、公証役場で作る公正証書遺言のほうが確実です。
もう一つが、2020年4月から始まった配偶者居住権です。
配偶者が亡くなったあと、残された配偶者がそれまでの自宅に住み続けられる権利で、遺産分割で家の所有権をほかの相続人が受け継いでも、住む場所は確保できます。
不動産がある、事業をしている、相続人どうしで意見が割れそうだ、海外に資産がある。
こうした条件が一つでも当てはまるなら、ネットの情報で判断せず、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談したほうが早く済みます。
相続は、二人が生きているあいだに財産をどう扱うかを決める話です。
相手が亡くなったあとに何が手に入るかを数える話ではありません。
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