アセクシャル、つまり他者に性的に惹かれにくいセクシュアリティの人が結婚を考えるとき、検索結果に「後悔」という言葉が並ぶと、それだけで足がすくむ。実際に後悔したという体験談も確かに存在する。ただ、その話を鵜呑みにする前に、後悔がどういう仕組みで起きているのかを一度ばらして見てみたい。原因が分かれば、避けられる後悔と、そもそも避けようがない後悔を切り分けられる。
後悔の多くは「期待のズレ」から生まれている
後悔したという話を集めていくと、共通点が見えてくる。本人のセクシュアリティそのものが原因になっているケースは、実はそれほど多くない。多いのは、結婚前に握っていたはずの前提が、暮らしのなかで食い違っていくパターンだ。
たとえば、性的な関係を求めない約束で始まったのに、片方が途中から「やっぱり身体の関係もほしい」と言い出す。あるいは恋愛感情がないことに最初は納得していたのに、生活を共にするうちに「もっと特別に扱ってほしい」という気持ちが芽生えて、満たされないと感じるようになる。どちらも、セクシュアリティの問題というより、二人の期待値がいつのまにかずれていった結果だ。
逆に言えば、ここが揃っている二人は後悔しにくい。長く続いている人たちは、たいてい結婚前のすり合わせに時間をかけている。地味で面倒な作業だが、後悔を防ぐ効き目はいちばん大きい。
「後悔した人」と「続いている人」を分けるもの
同じアセクシャルでも、結果が分かれるのはなぜか。差が出るのは、想定外の変化にどれだけ備えていたかという一点に集約される気がしている。
人の気持ちは動く。最初は「恋愛も性的な関係もいらない」と思っていた相手が、数年後に違う気持ちを持つことはありえる。その逆もある。続いている二人は、こうした変化が起こりうる前提で「もし気持ちが変わったらどう話し合うか」までを、結婚前にうっすら決めている。変化そのものを防ぐことはできないが、変化が起きたときの対応を決めておくことはできる。例外を想定しておくほど、いざというとき後悔に直結しにくい。
反対に、「この人は絶対に変わらないはず」と一つの前提に賭けてしまうと、想定が外れたときに逃げ場がなくなる。




