カフェで取材をしていると、こんなことを言う人に出会うことがある。
「ひとりでいるのが好きなんです。でも、ずっとひとりでいたいわけでもなくて」
その言葉のあいだにある、微妙な温度差のようなもの。僕はそこにいつも引っかかる。ひとりが好きであることと、誰かと暮らしたいと思うことは、本当に矛盾するのだろうか。
友情結婚について話を聞いていると、「内向的で」「人付き合いが得意じゃなくて」と前置きする人が少なくない。まるでそれが、何かを諦めた理由であるかのように語られることがある。でも取材を重ねるうちに気づいたのは、むしろそういう人のほうが、友情結婚の設計しやすさを自然に活かせるのかもしれない、ということだった。
恋愛の「テンション」が合わない
恋愛には独特のエネルギーがいる。デートのたびに会話を盛り上げなきゃいけない空気、相手の反応を逐一気にする緊張感、SNSでのやりとりが途切れると不安になる感覚。内向的な人にとって、あのテンションを維持し続けるのはなかなかしんどい。
ある30代の男性はこう話してくれた。「恋愛しているときの自分が、自分じゃない感じがする。無理にテンション上げてる感じ。あれが続くと思うと、結婚って疲れそうだなって」(※プライバシーに配慮し、詳細は一部変更しています)
この感覚は、たぶん内向的な人なら覚えがあるんじゃないだろうか。相手を嫌いなわけじゃない。むしろ好ましいと思っている。でも、自分にとっては一緒にいるためのエネルギーが大きすぎて、長く続ける自信が持てない。そういう場合に、別の関係のかたちを探すのは自然なことだと思う。
友情結婚では、その前提が少し違う。恋愛的な高揚感で関係を維持する必要がない。お互いの距離感を話し合って決められるし、「今日はひとりでいたい」をそのまま伝えることに、後ろめたさがない。こうした率直なコミュニケーションが自然にできるのは、友情結婚の大きな強みだ。
「ちょうどいい距離」は自分で設計できる
友情結婚で暮らしている人たちの話を聞くと、それぞれの「ちょうどいい距離」が本当にさまざまだと気づく。
リビングは共有するけど、夜は完全に別々の部屋で過ごすという夫婦がいた。平日はほぼ顔を合わせず、週末だけ一緒にご飯を作る。そういうリズムが心地いいのだという。
別の人は、月に一度だけふたりで出かける日を決めていた。それ以外は、同じ家にいても基本的に干渉し合わない。「同じ屋根の下にいる安心感はあるけど、べったりはしない。それが僕たちには合ってた」と笑っていた。(※プライバシーに配慮し、詳細は一部変更しています)
恋愛関係だと「もっと一緒にいたい」「なんで会ってくれないの」という感情のすれ違いが起きやすい。友情結婚では、距離感をルールとして最初に設計できる。これは内向的な人にとってかなり大きなメリットだと僕は感じている。




